【破線ルート】冬晴れの都会の大展望 丹沢・蛭ヶ岳
年末年始は、家の用事や親戚付き合いなどで何かと忙しかったのですが、正月三が日の最終日は時間がとれたので、新年最初の山行に行ってきました。
どこに行こうかプランを考えまして「山頂から海が見える」「山頂から東京の街並みが見える」「バリエーションルートもしくは破線ルートがある」といった要求を満たす山として、「丹沢・蛭ヶ岳」を選びました。
この山は、東京西部から見える壁のようにそびえる丹沢山塊の最高峰で、子供のころからいつも見ていた山なのですが、自宅の私の部屋のベットから頭の部分が奇跡的に見えることで非常に親近感を持っております。
蛭ヶ岳は、いつもは裏丹沢の「青根」からの最短ルートで登っていますが、昨年のクリスマスに檜洞丸から下山後に見た、蛭ヶ岳から北に延びる稜線を歩きたかったことと、バリエーションルートはムリでもせめて「破線ルート」を登りたかったので、今回は「神ノ川ヒュッテ」から登ることにしました。
神ノ川ヒュッテを起点に、「源蔵尾根(破線ルート)」を登って、その後、蛭ヶ岳→姫次→風巻→神ノ川ヒュッテと周回するコースです。
前日は、姑さんの家で親戚と新年の集りがあり、帰宅が23時前になったことから、今朝はいつもより遅めの5時起きで出発することにしました。
登山口の神ノ川ヒュッテは、前述の通り昨年のクリスマスの山登りの際の登山口だったので、前回と同じように国道20号を使って、藤野から県道76号線で神ノ川ヒュッテまで行きました。
いつも裏丹沢に行くときに使っていた国道413号の開通は3月になるそうです。
登山口には自宅から1時間半で到着。今回もゲート前の路肩に車を停めました。
前回登りたいと思った稜線がよく見えてます。
支度をして7時前に登山を開始しました。まずは、源蔵尾根の取り付きのある「広河原」までの林道歩きです。
ゲートをすり抜けて林道を進むと、またゲートが出てきました。その先にトンネルが見えます。
気温はもちろん氷点下。斜面の湧水が氷ついて「つらら」ができています。
さらに先に進むと、林道の斜面を2頭の黒い動物が猛スピードで走って行きました。
後ろ姿から「イノシシ」かと思ったのですが、そのうちの1頭が遠めからこちらを見ています。
よく見たら「カモシカ」でした。
へ~ぇ。。丹沢にもカモシカいるんだ~。
その後、立派な橋が出てきて
渡るとすぐに広河原への入り口が見えてきました。
奥に手書きの古い看板があります。
ヤタ尾根の入り口にも同じような看板があったのですが、山好きの地元の方が書かれたのでしょうか。登山者のために心を込めて書かれた文面に惹きつけられました。
沢に沿って道がついていて、源蔵尾根へは3番目の堰を渡ります。
3番目の堰に向ってちゃんと道がついています。
沢を渡ると「源蔵オネ」と書かれた手製の看板がありました。
夏はヤブが深そうなのですが、冬枯れの山では源蔵尾根への取り付きがすぐに分かりました。
破線ルートなのですが、登山道がしっかりついています。
朝日が差す尾根道を進みます。尾根が狭いので道に迷うことはなさそうです。
登りはほとんど直登でどんどん高度を上げて行きます。右手に檜洞丸が見えてきました。
この先に不明瞭ポイントが出てきて、登山道が「踏み跡」になりやがて消失しましたが、なんのためらいもなく尾根の上に進みました。バリエーションルートで養った感覚が役にたったかな。。
この先は稜線まで踏み跡程度の道になりやっといい感じになってきました。
蛭ヶ岳に延びる稜線がはっきり見えてきました。
稜線の手前で「危険箇所」とされていたヤセ尾根がでてきました。左側がザレ場で切れ落ちててロープが張ってあります。
慎重に通過して、踏み跡を進むと檜洞丸-蛭ヶ岳の縦走路に出てきました。
結局、GPSはおろか吉備人社の地図もコンパスも一度も出番なかったな(やや拍子抜け)。。
源蔵尾根の入り口には「源蔵おね」と書かれていた手製の看板が置いてありました。
すぐに梯子が出てきましたが、その後は歩きやすい道が続きました。
でも、アップダウンは結構ありますね。
途中の臼が岳にて。
冬枯れの稜線は展望を楽しみながら歩けますね。
何回かアップダウンを繰り返し、蛭ヶ岳への最後の登りです。
所々鎖ありで急登です。
ついに蛭ヶ岳の頂上に到着。駐車場からの所要時間は4時間10分(休憩含む)。源蔵尾根が意外とあっけなかったかな。。山頂には何組かのハイカーの方々がいらっしゃいました。
蛭ヶ岳山荘です。頂上のいちばん高い所に建っている感じがします。(いつも情報ありがとうございます)
頂上からの展望です。北側から反時計回りに行きます。
まずは大室山とその後ろは奥秩父の山並み。
裏丹沢の山々、手前左が檜洞丸で右が大室山、奥に畦ヶ丸があり、その上に南アルプスが見えます。
丹沢から見る富士山はいい形をしています。
富士山の左は愛鷹山。ここから駿河湾を見るのは角度的にキビしそうです。
南西の方角に小田原の市街地、相模湾、真鶴半島がよく見え、金色に輝く洋上には初島と伊豆大島が逆光でぼんやり見えます。
丹沢主稜線方面。丹沢山の横あたりに江の島が小さく見えます。
横浜方面。
東京都心方面。東京湾の青色とビル群がはっきり見えています。(写真では分かりにくいかも)
雄大な展望です。
生まれ育った都会の街並みを、幼い頃から見てきた山の上から眺める感激。
この景色、いつまでも見ていたい思いです。
今日は風が強いので、頂上で食事をとることを諦め、風の穏やかなところまで下りることにしました。
長い階段を下って行くと、次第に風も弱まってきました。
途中、「地蔵おね」と書かれた看板を見つけました。
ここも破線ルートから登ってきた稜線との出合いです。踏み跡が伸びていて興味深々。。
その先の「地蔵平」という場所で昼食をとりました。
お湯を沸かして、カップラーメンとコーヒー。(おにぎりも2個あったのですが写真撮る前に食べてしまいました)
昼食を済ませ、再び稜線歩き。
なだらかな樹林帯の中の登山道が続きます
ここから焼山方向に青根まで下りることが多いのですが、今日は登山口の神ノ川方面に進みます。
しばらく歩くと「袖平山」に到着。目にしみる空の青さです。
ここから見る蛭ヶ岳はどっしりした山容です。
蛭ヶ岳~檜洞丸の稜線が一望できました。登った源蔵尾根もよく見えます。
木々の間から都心のビル群も見ることができました。
少し進んだところから、これから歩く尾根が一望できました。冬枯れの木の色で獣の背中のように見えます。
ここからは基本下りなのですが、所々平坦な登山道があり、陽ざしに照らされて心地よく歩くことができます。
「風巻の頭」には休憩所がありました。
ここからは急下りになり、どんどん高度を下げて行きます。
しばらく歩くとかすかに鈴の音が・・・。耳を澄ますと下の方から聞こえてきます。先行者がいるのか??
突然、真っ黒な動物が前から走ってきました。
犬だ!!
私が喜んでいる様子を見て安心したようで、そばに寄ってきました。
猟犬のようで、オーナーさんの名前が書いてある首輪をしています。
精悍な顔つきと引き締まった体で、表情を全く変えずに私の周りを歩いています。
おそらくハンターさんが下にいると思ったので「一緒に下りよ」と言ったら私の前を歩き始めました。
しばらくすると、猟犬くんが私のそばにやってきて、なにやら言いたげな顔をして、左側の斜面へと走って行きました。ハンターさんのところに戻ったのかな?
その数分後、左側斜面からけたたましい音がして、本州では今までに見たこともないでっかいシカが走り去っていきまいした。(一瞬の出来事で写真が撮れなかった)
再び猟犬くんが私のところに戻ってきました。
「ありがとう、私の身を案じてシカを追い払ってくれたんだね。」
しばらく一緒に歩いていたのですが、猟犬くんがどんどん登山道を下って行きました。
麓から大きな叫び声が聞こえます。ハンターさんが猟犬くんを呼んでいるようです。
私の方も急坂をどんどん下って行きます。
河原が見えるところまで下りてきたのですが、ハンターさんがまだ叫んでいるようです。
猟犬くんがはぐれないかちょっと心配になりました。
ついに河原まで下りてきて、橋の写真を撮ろうとしたとき、さっきの猟犬くんが私をめがけて走ってきました。
「ありがとう。オーナーさんが呼んでるのに、先を歩いて私に危険がないか確認してくれてたんだね。」
またまたハンターさんの呼び声がしたので、「行っていいよ、(オーナーさんが)あなたのこと呼んでるから」と言ったら、一目散に橋を渡って対岸に走っていきました。
私の言葉、ちゃんと理解しているようでした。
私も橋を渡り切って林道に到着。
ちょうど、車の荷台に猟犬くんを乗せ、引き揚げようとしていたハンターさんに会うことができました。
猟犬くんとの出来事の一部始終を話すと
「どうりでコイツ(猟犬くん)の行動がいつもと違うと思った」と言ってくれました。
最後に、下山中に見かけたシカの話をすると、ハンターさんは真顔になって、見かけた場所と時間、逃げ方向、シカの大きさや性別、角の様子など細かく聞いてきました。
話し終わるとすぐに車をUターンさせ、帰り道とは逆方向の、林道の奥に走って行きました。
日没まであと2時間強。仕留めに行ったようです。
私の方は10分の林道歩きの末、登山口に到着。
一息ついて、のんびりと歩いてきた尾根を眺めていました。
すると、山中から犬の鳴き声がして、そのしばらく後に「パン、パン」「パン、パン」と4発の銃声が谷に響き渡りました。
ハンターさんシカを見つけたみたいだな。
忘れ物がないか車の周りをチェックして出発しようとしたとき、さっきのハンターさんの車がゲートのところにやってきました。
聞いてみたら、まだ山の中にいた仲間に連絡してシカが進んだ方向に回り込み、その仲間がシカを見つけたそうです。但し仕留めたかどうかはまだわからないとのこと。
私は帰り際に猟犬くんにまた会えてうれしかったです。
帰り道、他のハンターさんが何人か林道から山を眺めていました。
皆さん、黄色やオレンジの蛍光色のハデハデなウェアを着ています。仲間との誤射を避けるためでしょう。
バリエーションルートを登る時は、動物との遭遇を避けること以外にハンターから誤射されないことも重要な危機管理です。
なので、バリルートや破線ルート登る時は、年甲斐もなく暖色系の蛍光の派手なウェアを着て行くのですが、年末に買おうか迷って結局やめた黄色のコンプレッションシャツ、やっぱり買おっと。。